生きにくい時季ではあるものの
季節の変わり目には、決まって持病の喘息が悪化して気管支が鳴る。だから季節が変わりゆくのが苦手であるはずなのだが、感情というのは仕方がない。感傷というのは。過ぎゆく季節を見送ることが、身体の苦痛と引き替えにすることもできないくせに、好きだ。
夜、早い時間(21時とか)に近所の公園の中を歩いて通ると、沸き上がるのは、はや、秋の虫の声々である。山奥の霧のように、後からあとから足元を包んで流れる。膝下10cmまでの空間を音が満たすのを幻視する。
しかし深夜帯(24時とか)に通ると、一転まだ蝉の声が全身を包む。まだ冷やかしの秋の気配は夜半に至らず姿を消し、命がけの夏の最後の一片が依然季節を叫び続ける。夜になっても。風だけが不吉な予感のように、夏の焦燥を煽り立てる。
そういえば、今年の夏は西瓜を一口も食べていない。となると急に食べたくなった。ああ、やはり秋に追い立てられている。
- 作者: 加納朋子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/07/26
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