世界を変容させるもの

道路端に植えてある灌木。その根元だけコンクリートが切り取られて土が詰め込まれている。都会で見られる幾万本もの木のいけす。そこに、一匹の、すずめがもがいていた。
怪我をしているのかと思ってどきどきしながらしばらく見ていた。暑いのに血の気が引いて冷たい手のひらを握り込みながら眺めて、眺めていて、そうしているうちに、ああそういえば、砂浴びという言葉があるなと思い出した。
いつまでたっても飛び立たない。頭の上には朝から太陽の熱線を感じるし、汗がたらたら出てくるし、そこを離れる。多分きっと砂浴びだったんだ、大丈夫、と思いながら。
ネットでもさもさ検索してみたところ、やはりあれこそは砂浴びというものであったらしい。そうとわかってみれば、なるほど、非常に愛くるしい眺めではあった。地面にすり鉢状の穴をあけ、茶色いスズメが中にぽこりとはまって、一心不乱に体をすりつけ、穴を掘り広げている。羽がじたじた動いて、黒いほっぺが細かく揺れている。ちいさきものはみなをかしきかな。

以来、道路を歩く時は常に街路樹の足元を眺めるようになってしまった。
一度気がつくと、結構見つかるのだ、すり鉢が。
今度一つ掘っておいてやろうと思う。
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ハッピーエンドは決して癒しなんかではないのだ、と思う。