地に足

階段を上るとき、気づくとグランドフロアからファーストフロア、セカンドフロアと数えていて、それはイギリスで階を間違えないようにいちいち念入りに数えていた癖が抜けないのだが、気づいたときに矯正しようかどうか迷う。人は階段を上るとき、無意識に上っていく階数を数えるものではないか。気づくと一階、二階、と数えているようになった時、私は完全に日本の生き方に戻るような気がしてしまう、イギリスの暮らしがなかったことになってしまう、気がしているのだ。

それとは別に、ああ、日本に戻るってことは、日常に戻るってことなんだなあと思ったのが、歩いている時や自転車に乗っている時がものすごく暇であるってことだ。見慣れすぎた景色過ぎて、駅まで歩くわずか五分が暇で暇でしょうがなく、ついケータイ読書をしてしまう。見慣れぬ景色は目に面白く、読書なんてしてる暇なく見とれているもので、イギリスにいて歩きながら読書とかしなかったのはそういうことだったのだと今になって気づいたのだ。