どうかな
自分であれば耐えられないと思う。未だ口にすることすら出来ないと思う。口にしようとするだけで息がつまり、嗚咽をこらえるのに必死で、誇張や思いこみでなく、真に声を出すことすら不可能になる。
自分に近しくあって、失われたもののことを語るのは。
もう三年前になるが、失ったもののことを、未だに語ることができない。その頃の仲間と会えばその話が出てこないことはないと思い、出なくとも仲間といるだけで思い出すと思い、同窓会のようなものに出ることもない。
失って以来、世界は確かに変質したのだ。もう元に戻ることはない。そしてもちろん変質した世界は時を止めることもなく変容を続け、変質を知らない人間にとっては何の変わりもない世界が続いている。それが、どうにも、空虚である。気が狂いそうなほど、耐えられない。
毎年届けていた花が、今年は宛先に該当人なしで届けられなかった。
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ありきたりの話だと思いながら、陳腐ですらあると思いながら、それでも最後に不意を衝かれる。
人間に唯一許された魔法が、言葉であるから。
いつかは語るべきであるのかもしれない。語ることによっていつかが訪れるのかもしれない。
時は残酷であり、言葉は決して優しくはない。