がっかり

[rakuten:book:12928367:detail]
うーん。この前長編を読んでこの人は短編がうまい人なんだと言った気がするけど。こいつはちょっと…。

日常の謎ものは、謎が軽くなるだけに、そこに推理を持ち込んだときのバランスが非常に大事なのだと思う。
成風堂の初期短編集は、そこのバランスがよかった。端から見たらくだらないような小さなことにも、人生かけちゃえるくらい好きであれば全身全霊をかけて打ち込める。真剣に推理をやることに説得力が生まれる。ストーリーは推理を内包して耐えきれる。その情熱は同じ本読みである読者にも共通しているものだから、すんなりと入っていける。

これは出版社の営業さんが主人公の話なんだが、謎がどれも読みながら答えがわかっちゃう、というようなレベル。謎が小さいのは小さいでいいんだけど、底が浅いのは問題だ。そしてその解答を裏打ちしている物語も、非常にありきたり。

ああ、あれですよ。坂木司に非常に似ている。
できる担当者吉野の仕事を引き継いでいる主人公井辻君と、彼をひつじくんと呼び続けるライバル会社の先輩営業(吉野のよきライバルだった)。うーん。鳥居と坂木の亡霊が見える…。
あれほど甘くはないが、同じように底が浅い。
期待していただけに、残念だ…。