理由

広川太一郎さんが亡くなったという。
広川太一郎という活字を見ただけで共感覚のように文字があのホームズの薄茶色に染まり、快い湿度の温かく柔らかでしかし芯の通った声で軽妙なものすごいダジャレが聞こえてきそうに思うのだ。
それがこの世にもうないということは、あまりに空虚だ。
悲しさの究極の根源というものは、それは、とても大切なものがなくなった空虚な世界にそれでも自分が生きていることに対して、なのではないだろうか。