へええ

孤独の島 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-22)

孤独の島 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-22)

 これはエラリイのでてこない、ノンシリーズもの。
 会社の給料日に給料袋を盗んだならずものたち。手引き役の警備員をあっさり殺してしまい、あっという間に緊急配備がしかれ、包囲網を抜けるために奪った金を一時的にどこかに預けることに。預けたのは、ある刑事の家。子供をさらい、金と引き替えにする。刑事は子供を無事取り返せるのか? 犯人は捕まるのか?
 というサスペンス風。駆け引きのところはそれほどひねってあるわけでもなく、ハリウッドばりのアクションシーンがあるわけでもない。こういう設定の話だと、犯人との知恵比べとか駆け引きかアクションかで面白みを持たせるものなのだろうが、どちらでもない。では何かというと…これが、なんと人間なんだな。
 面白かった。感動する。
 映画にしたらかなりいいと思う。「大誘拐」と「スペーストラベラーズ」と「踊る」を足して三で割ったテイストにするといいんじゃないかな。主役は「半落ち」の主役をやったおじさんでお願いします(なぜ邦画にする…)。
 どうでもいいが、作中で犯人がクマのお面を被っていると書いてあったのだが、私の頭の中でクマのお面といったら勝手に「ONE PIECE」のCP9(たしかブルーノ)が被っていたお面に変換され、以降全部アニメ絵になってしまった。

それにひきかえ

メロス・レヴェル

メロス・レヴェル

 は無理。この人のデビューは『バトルロワイアル』の設定真似だったが、今度は『ユウ』だったか『エル』だったかの真似かの。
 少子化問題とかを憂えた国がヒトの絆を褒め称えるために「メロスとセリヌンティウス」の話をモデルにしたゲームを行うという設定の話。十組が選ばれて、五つのステージを闘う。一人が「メロス」となってゲームを行い、もう一人は「セリヌンティウス」となって、メロスが負けた時には自分の身体の一部を失うことになる。ステージごとに脱落していき、最後のゲームに勝てば五十億円。というゲームなのだが…
 つまらない。感動もしない。

 まずゲームがつまらない。一つめは相手について答えさせる問題、二つ目は一般教養クイズ、三つ目は暑さ寒さに耐えて立ち続けるゲーム。最後はただただ走るだけ…。なんの工夫もない。もうちょっと頑張れ。それにしても最後のくらいお前らもうちょっと頭使えよ。
 そして勝者がつまらない。はあ? って思う。なんの感慨もない。
 さらに壊滅的にコネタがつまらない。多分いろいろ考えさせようとかしみじみさせようとか思って挿入されているであろう参加者それぞれの人間ドラマや設定がくそつまんない。あまりにうすっぺらすぎて、むしろいらないんじゃないかい、と思う。

 やりたいことはわかるのだが、なってねえ。というかこういう鬼畜な設定なら、もっと細部を詰めて、そして設定を活かすようなプロットをつくろうよ。ただゲームが進んではいおしまい、じゃ、なんのための小説よ。極限状態に置かれた人間を書きたかったなら「書けてない」よ。