剣と薔薇の夏

を読んだ。
名探偵シリーズを読んで期待していた戸松さんの本格。
咸臨丸のあとの使節団を歓迎するニューヨークが舞台。

歓迎委員会に関係ある人間が次々と殺され、死体のそばには創世記の一部が。周囲のちんぴらをまとめる役の小悪党ランポーナが殺され、委員会の記章とノアのページが添えられていた。ランポーナは墜死したあとに死体が階上まで運ばれていた。次に殺されたのは委員のひとり。今度は水死ののちに焼かれ、息子を燔祭に捧げるイサクのページが。次は密室で爆破がおこり、中には使節団が泊まるホテルの役員F氏(名前忘れた)の刺死体とヨブのページが。また行方不明になっていた委員会のひとりが餓死体で発見され、バベルの塔のページが添えられていた。

ランポーナ以外の三人は、昔奴隷を脱走させる活動に関わって捕まった経歴を持つ。同時期に捕まって居た三人は顔見知りだと思われる。一応犯罪ということになっているが、北部ではその活動は正義的に見られるのに、三人はその関係を隠し、表面上は見知らぬ他人としてつきあっていた。

犯人は、ホテル役員の秘書の女性。
三人は奴隷を捕まえて送り返す馬車に、後ろ暗い金を運ばせていた。それをごまかすために知らない振りをしていた。Fはそれがばれそうになったので他の二人を殺した。と思いきや、実は自分も殺された。密室は、鍵をかけると大きな音がするドアが、主人が引っ込んだすぐあとに鍵がかけられ、以降階段をあがってくる人間は全部見張られていたのに、突然爆発がおこったというもの。実は秘書はずっと部屋に隠れていて、そっと鍵をはずしてでてきて、階段をあがってきたふりをしたというもの。
聖書の一節は、字の読めない実行犯においておくべきページを間違えないようにするため、裏に挿し絵のついたところを選んだ。

秘書は奴隷出身の黒人の血がながれていて、彼らに復讐をしたのだ。

聖書の一節がどれも「船」「剣」「あばた」「意味のわからない言葉」と日本人を象徴するようなものになっている、とか、どれも「与えては奪う」という意味をあらわしている、とか。
びみょう。
ミステリ部分はまあよいけれども。ミステリ以外の部分が冗長すぎ。
いろんな場面の断片を差し挟むのが多すぎる。脱走奴隷の話のところでは実際に脱走する奴隷が主人公になった一人語りが延々と、しかも何度も入るし。死体発見も発見者の人生がいちいち物語となってしっかりと書き込まれていて。はっきりいってうざいんだよね。

剣と薔薇の夏 (創元クライム・クラブ)

剣と薔薇の夏 (創元クライム・クラブ)