時間の経過にともない

悪魔の報酬 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-21)

悪魔の報酬 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-21)

読了。
私は本を読むときに何が苦手って、書かれている場面の建物の高さや広さといった位置関係を想像することが一番苦手だ。大抵勝手に想像していて、ミステリの場合結構それが致命的になることも多い。だから見取り図がついているミステリって大好きだ。
外国の本は、まずもって間取りが日本のウサギ小屋とは違いますから難易度がさらに上がりますのです。

そんなこんなですがこれもちゃんと読めました。
クイーン大好き!

あと

雨恋

雨恋

も読みました。
これはよくできているなあ。
やはりミステリには文章力が必要不可欠だと思う。
伏線を張ったり、動機を書き込んだりするには、やはり美しい文章がほしいのだ。
私ははじめからずっとあれ? あれ? と思っていて、その違和感が解消されるラストは本当に気持ちがよかった。

あまりにミステリとして出来が良すぎたので、恋愛に関する描写が余計なものに見えてしまった。私はラストのふたりのあの行動は別になくてもよかったんじゃないかなあ、という気がする。
しかしそれは私の考えるミステリの美しさであって、これまで読んできたところでは、松尾由美の「リアル」としてはこうなるに決まっていると感じられる。

そう、松尾由美の考えるリアルは私にはとってはいつも少しグロテスクな程に生々しく見える。生理的に気持ち悪い。『バルーンタウン』はもちろんのこと、『ピピネラ』でもそうだ。

だからこれだけ良くできたミステリでありながら(『バルーンタウン』もそうだが)、私は「松尾由美大好き!」とは言えずにいるのである。